兄弟ですが、血の繋がりはありません!
第3章 次男のオモテは裏…らしい
真っ直ぐな瞳に射抜かれた。
強く重く深く、それは俺に刺さる。
「大袈裟に聞こえるでしょ?でもさ、これホントなんだ。明るくて勉強が出来て優しくて、そんな理想ばかり見ていたらオレには眩しすぎて目がチカチカしちゃって、見えなくなっちゃった」
そう言う鶫に、俺は少しばかり腑に落ちない部分があった。
「鶫は昔から優しいし勉強だって人一倍してたよ。それは作った『方来鶫』じゃないんじゃないの?」
「ほんと…?」
驚いた顔で前を歩く鶫が振り返った。
「ごめん、鶫」
「なんで兄さんが謝るの」
「だって、鶫が一生懸命作り上げてきたものを否定した。本当の鶫なんて俺の中の記憶でしかないのに、なりたい自分になろうと努力している鶫を困らせた」
「なりたい自分・・・そんな風に思ったことなかった。ずっと嘘の自分だって思ってたし、行き辛い気もしてた、から…でもそうやって考えたら楽になりそうだね」
「あのさ、鶫。やっぱり全部が鶫なんだよ。大人しいのもうるさいのも、ケラケラ笑うのも優しく笑うのも。ぜんぶ、俺が見てきた鶫だ」
伝われ。言いたいこと。
鶫には、悠には、今まで関わってきた大人たちみたいに息を吐いてほしくないから。
自分を守るためにつく嘘、誰かを傷つけるための嘘、偽りに偽りを重ねた嘘。
どれも使って欲しくない。だから、
「好きだよ」
「え」
「どの鶫も、好きだよ。人間に裏表なんてない、どっちも表!全部鶫だ!」
「ちょっと兄さん。まだ夜中だよ。静かに。
でも、ありがとう。めっちゃ元気でた!」
ああ、いつもの鶫だ。
元気いっぱいみんなに愛される、鶫。
「藍色とオレンジ色」
「へ」
「いつも鶫の周りは温かい夕方の色だね」
毎日同じ空は見られない。
それとおんなじように、毎日鶫は変わっていく。
そう思ったら心がスッキリした。
鶫は鶫。表は裏で、裏は表。
なぁんだ、一緒だ。
"…の目はいつも色が見えてるんだね"
「え?」
「?兄さん?」
今の声、鶫じゃない。
誰だ、この記憶は、なんだ。
"智にぃの世界は白黒の僕とは違う、虹色だ"
「悠・・・?」
「兄さん、どしたの…?」
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