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兄弟ですが、血の繋がりはありません!

第9章 未来なんて不確かなものを見る


***

「ん、と。もう1回説明いい?」

それはそれは慌てて喋るものだから、話の筋があっちに行ったりこっちに来たりでしっちゃかめっちゃか。

とりあえず作業を中断して、近くの芝に座ったもののまだ事態を把握出来ていない。

「じゃあ!まず、これ見てくれ!」

息の上がった友だち___北ヶ谷が差し出して来た紙。

「・・・次世代絵本作家発掘コンテスト?」

「なにこれ」

「いや、だから見たまんま」

「これと俺と、なんの関係があんの?」

初めて聞くコンテストだ。
どこかで関わったことあったかな…?

「あの、そのー・・・です、ね?」

「あんたまさか!!」

モゴモゴと口の中で話す北ヶ谷に、彼女___三崎が声を荒らげた。

「俺の話に方来の絵を挿絵として、応募したら絵の部門で優秀賞貰いました・・・」

「え」

「この馬鹿、何してるのよ!それ相手にバレたら大問題じゃない!」

あまりに大きな話で頭が着いてこないけど、これってつまり・・・?

「だからまず謝りに来た!方来、本当にすいませんでした!!」

「・・・」

なんて、言えばいいのか。
昔から話をすることがそんなに得意じゃないから、余計に上手く言葉が出てこない。

「方来くん何かこの馬鹿に言うことないの?」

「…何か言わなきゃいけないってことは、分かるんだけど、まだ頭が追い付かなくて、それよりも俺の絵が賞を貰ったって、それが、嬉し、いいぃい…」

久しぶりだ。絵を褒められるのは。

『智希は絵が上手いなぁ』
その言葉と大きな手。あの昼下がりが蘇る。

「そんで、あの正直に相手方に話したら是非会いたいってコンテスト開催してた出版社の人がいて…会うよな?」

「会う、会うってなんで…?」

「そんなの決まってるじゃん!仕事貰えるかもしれないんだぞお前!」

そっか、そういうことがあるんだ。
絵の仕事をさせて貰えるかもしれないのか。

「これって大きなチャンスなんじゃないかな?好きな事でお腹が膨れるかもしれないじゃん!」

「お腹…?なんだよそれ。でもさ、俺が言えないんだけどこれはチャンスだと思うよ方来」

チャンス、チャンスか。
うん、何事も自分で見て見なきゃ分かんないし。

「・・・会って、みる」

方来智希、大学2年。
少しだけ未来を考えてみようと思う。

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