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兄弟ですが、血の繋がりはありません!

第9章 未来なんて不確かなものを見る


悠side

全てを吐き出したあの日から1週間。

「どうしてこうなった」

時刻は午後3時、場所は都内のスタジオ。
俺はまた着せ替え人形状態になっている。

「ちょっと母さん?」

さっきから姿の見えない母を呼ぶが返事はない。代わりに母さんのマネージャーさんがニコニコと笑顔でこちらへ走ってきた。

「ことりさんなら映画の撮影に行かれましたよ」

「知らない場所に息子を置いて?」

「はい!」

信っじらんない!自分が何してるか分かってる?不登校の息子騙した挙句、他人に押し付けて仕事行ったんだよあの人!

「それとこれは一体・・・俺は今から何を…」

説明を求めた時だった。前回お世話になったカメラマンさんと、知らないおじさんがこっちに歩き来た。次から次に事が起こりすぎて頭痛くなってきたんだけど。

「やあ悠くん久しぶり。また君を被写体に出来るなんてオジサン光栄だよ!」

「お久しぶりです、東郷さん。実は俺、今日のこと何も母に聞いてなくて、これ何ですか?」

前回よりテンションの低い東郷さんにホッと胸を撫で下ろす。あれは撮影の時にスイッチが入るみたいだ。

「今日はこの前の悠くんの写真を見た彼からのご指名だ。おめでとう」

「?おめでとうって、」

話の意味が分からないまま首を傾げた瞬間、ガシッと手を握られた。

「君は俺のイメージにピッタリだ!」

「え?え?え?」

「彼は演出家の柊木さん。そして今日は、今度撮るドラマ仕立てCMのメインキャストとして君は呼ばれたって訳だ」

「最も今日は作中で使う君の写真を撮るだけなんだけど。いい表情(かお)を頼むよ」

自分の知らない所で話が進み過ぎていて、何が何やらだ。CM?演出家?写真?どれもこれもぶっ飛び過ぎていて入って来ない。

「はい、これ。明日撮る映像の台本。君以外はエキストラだから台詞の掛け合いとかないし、好きなように仕上げといて」

「えっと、あの、どういうことですか。なんで俺の写真を見ただけでそんな話に?CMって一体、」

「俺は君の写真を見て涙が出た。思春期のあどけなさと危なさ、それを上回る苦しみと恐怖。鳥肌が立った。CMは大手携帯会社からの依頼で、俺は全てを任されている。他に聞きたいことは?」

真っ直ぐな嘘のない強い目。

聞きたいことはあるけど、

「いえ、撮り終わったらでいいです」

今は、いい。

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