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兄弟ですが、血の繋がりはありません!

第13章 音がしたのは冬のはじまり


鶫side

「1週間だけ、休ませてください」

そんな電話を学校にしたのはついさっきのこと。
こうすれば昨日自覚した『恐怖』から少し離れられる気がしたからだ。

担任教師はいつもの明るいトーンで話すオレとは真逆の声に戸惑いながら、「大切な時期だから、少しでも勉強しろよ」とそれだけ言って電話を切った。

_____悠をなかば追い出すようにして部屋から出して数時間。一度も顔を合わせられていない。合わせる顔なんて、ない。

それの延長線上にいるようにして兄さんとも話は出来ていなかった。

嬉しかった、悠にああして言って貰えたこと。
オレはちゃんと兄さんにしてもらって来たことが、してあげたかったことが悠に出来ていたって分かったから。

それだけで満たされたはずの心。
なぜかその部分に大きな穴がぽっかりひとつ。

「こわい」

そう口にした時に心を落としてしまったようだ。

心を無くしてしまえば、辛くないし悲しくないけど嬉しさも楽しさも幸福感も溜まらない。

オレの中の核がなくなった。


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