兄弟ですが、血の繋がりはありません!
第13章 音がしたのは冬のはじまり
智希side
「智にぃ!起きて!ねぇ!」
珍しく大きな声で起こされる。まだ、眠いんだけど、そう思いながら薄目を開けると、目にいっぱいの涙を溜めた悠が俺の端を布団を握っていた。
「…どした?怖い夢でも見た?」
「夢なら良かったけど、夢じゃない…鶫くんが、家出したぁっ・・・俺の、俺のせいだ」
「え、鶫が?
…あ〜、あれか昨日の。悠のせいじゃないよ」
昨日のお昼ご飯の後、リビングでだいぶ怒っている鶫をそっと見ていたけどあれは本気怒りじゃないから。それに鶫は感情だけで家出するような子じゃない。
「でも、でもっ俺が何も話さなかったから、それで鶫くんに寂しい思いさせちゃったから…だから俺にそれを分からせようと居なくなったんじゃ…」
「それも違うよ。そんなやり返すみたいなこと、鶫はしない。たぶん悠のことが大好きだから、自分が傷つける前に少し距離を取りたかっただけだよ。ちょっとしたら帰ってくるよ」
「ホント・・・?」
「だから気にせず待ってな。こういう時は携帯も繋がらないだろうし、下手に探すこともない」
…それにしても、こんな風に泣く悠を見たのはいつぶりだろう。いくつも溢れる涙は指で拭いきれない。
「・・・昨日、鶫くん『怖い』って言ってたから…心配。それに最近ちょっと食欲もなかったし、俺が何かのスイッチを押しちゃったんじゃないかって思って…」
「はーる、大丈夫だよ。大丈夫。気持ちが落ち着いたらまた何でもない顔して帰ってくるから。それになんとなくだけど行き先も心当たりあるし」
大体こういう時に鶫が行きそうな所、すぐに思いつくだけで三箇所はあるしそのうち二箇所は連絡が取れる場所だ。
何も慌てることはない。
「いつも通り制服着て出て行ったから、書き置きを見るまで家出だって分からなくて…」
え。
「書き置きって?」
「これ・・・」
それは小さな犬の絵が描いてあるメモ帳で、1番上の紙には鶫の癖字。
『 兄さん、悠、ごめん ちょっと疲れた 』
「鶫くんこんなこと書いたメモ、置いてくなんて変じゃない?本当に帰ってくるよね?」
大丈夫、そう思っている。はずなのに、なんだか少し胸騒ぎがした。
「悠、母ちゃんたちに知らせておこう」