兄弟ですが、血の繋がりはありません!
第14章 主人公になりたい
悠side
『ごめんね、ちゃんと帰るから』
何年も聞いていなかったみたいに、電話越しに入って来たその声は俺に大きな安心を与えてくれた。
鶫くん、帰ってきてくれるんだ。
智にぃにはそんなに心配することないって言われたけど、やっぱりどうしても俺のせいで鶫くんが苦しんでるんだって思ったら考えるのをやめられなかった。
俺たちは兄弟だけど、兄弟じゃない。
一緒に育ってきただけで、血は繋がってない。
いつもどこかその事実が頭の隅にあって、もし本当の兄弟だったらこんなことにはならなかったのかなと思ってしまった。
もっとも俺は上2人に遅れた入った末っ子だから。あの2人だけの兄弟だったら…なんてことも考えてしまうのだ。
この話を兄たちにしたらきっと、泣いて怒るんだろうな。3人で兄弟であることを凄く大切にしている2人だから。
「…る、はーる、悠!!」
「あっはい!、えっと、あ、柊木さん…」
「どうした?上の空だったぞ」
そうだ。今は仕事中なんだから。ちゃんとしなきゃ、余計なことを考えるな。
「そんな悠くんに、はいこれ」
「?、なんですか」
「今度俺の知り合いがドラマ撮るんだけど、オーディションで役決めるって。出てみないか?」
それは日時と場所のみが書かれた小さな紙。そうか、情報が漏れないようにしているんだ。
「って言っても悠は既に一次審査、通過してるんだけどね。これもCMのお陰だ。つまりは…?」
「・・・柊木さんの、おかげ?」
「そういうこと♪」
「…あ!俺まだ受けるって言ってないです!」
「またまた〜CM撮った時はこの業界に微塵も興味なかったはずなのに、こうやってまた俺と仕事してくれてるってことは、もう答えあるんじゃねぇの?」
答え。そうか、俺まだあの時の返事してないのか。
「…いいんですかね。俺なんかがこういう世界に生きてみても。普通の生活だって出来ないのに」
「ここにいる人間はみんな普通じゃないよ。俺もことりも。まぁでも、悠は未成年だから、やる気と一緒に家族が応援してくれてるなら文句ないけど?」
普通じゃないのか、この世界は。
それなら、俺も少しは生きられるかな。
「やりたいです、この仕事。この世界に居場所がほしいです」
「よし、それじゃあ初主演かっさらって来い!」
「はい!」