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兄弟ですが、血の繋がりはありません!

第14章 主人公になりたい



***

撮影が予定より早く終わったからスーパーに寄ってから帰ろうといつもと違う道へ進んだ。

ここの路地裏、久しぶりだな。
・・・よく学校からの近道で通ったっけ。

「…あれ、方来くん?」

「!」

名前を呼ばれて反射的に振り返る。

「あ…っ」

「ひ、さしぶりだね」

それはあの時の彼女だった。名前は知らない、だけど絶対に忘れたことの無い彼女。

手が震えて、やけに冷たい汗が熱くなった背中を伝った。言葉など出るはずもない。

「あのね、私…あの時は本当にごめんなさい」

「…っぅ」

張り付いた喉が小さく音を出す。

「お、れの方こそ…目の前で吐いたりして、ごめん」

言えた。
ずっと心の奥で引っかかっていたことだった。

「…急に変なこと私が言ったから、だよね。あれからちゃんと考えたの。それで、本当に謝りたくて、でも、学校来てないってクラスの子が…私の所為で…」

「ち、ちがう。あれは、俺が自分で乗り越えなきゃいけないことがあって、あなたはそのトラウマっていうか、それの、引き金だっただけだから、」

ああ、引き金とかトラウマとか余計なことばかり言ってしまう。そうじゃないんだ。そういうことが言いたいんじゃ、ない。

「とにかく、あなたは悪くない!俺が全部悪かった、吐いたこと本当にごめん!それから、もう気にしないで。たくさん考えてくれたみたいだから…」

自分の所為で、なんてそんなの考えないで。
俺はこの子のことを何も知らないけど、そんな苦しいものを背負ってほしくない。

「…ありがとう、方来くん。もうこのまま謝れないままかと思ってた。今日会えて、良かった」

ずっと強ばっていた彼女の顔がふわっとほぐれて、それと同時に俺の表情筋も力が抜けた。

身体の柔らかいそのまた奥に溜まった塊がすーっと溶けていく感覚がして、やっと地面に自分の足で立てたようだった。

「それじゃ、私これで…」

「あっ待って」

これでやっと前に進んでいける。

「名前、教えてくれる?」



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