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無表情の宇野くんA

第55章 プールとホテル⑤。

その後は、遊園地のスタッフが駆けつけて来て、男たちは連れていかれたそうです。


二人は元いたベンチに戻り、


「ごめんね宇野くん、あと、ありがとう」


五味さんはそう言った。


言いたいことは色々あっただろう、まだ謝りたりないし感謝したりないだろう。しかし、それがその時五味さんが言える精一杯で最低限の言葉だった。


宇野くんは五味さんに心配をかけまいと、平気な風を装ってはいたが、その手は震えていた。


だから帰りの観覧車の中で、五味さんは宇野くんの手を握ってあげたそうだ。


善とは何か、悪とは何か。善は後味の良いことだというけれど、だったらこれは後味は良くはないけれど、悪くはないのではないだろうか。


ならば私は、宇野くんがやったことは善だと思う。


「そんなことがあって、私は宇野くんが気になり出した。へへ、こういうの恥ずかしいけどさ、そんなことがあったから、私から気がなくなることなんて多分ないよ」


絶対とは言い切れないけどね──と、五味さん。


それもまた、五味さんらしい言葉だった。


大毛さんが、気まずそうに部屋の隅に座っていた。

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