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無表情の宇野くんA

第68章 五味さんと始業式②。

始業式は全員眠そうにしていました。


昨日は五味さんを間一髪のところで止めたけど、彼女は下着姿でアパートの外に出ようとしていた。


誰にも見られなかったことが救いだが、そんなドジがあるだろうか?ドジっ子にもほどがある。


でも、色々あったが、五味さんが来てから楽しいことが増えた。正直、誰もいない高校に行って不安もあった。だから五味さんという縁で、宇野くんや大毛さんとも遊べたのはとても嬉しいことだった。


それにしても、なにもない夏の日々は、私の高校二年生の夏休みは終わりを迎えてしまった。


悲しいとは思わないけど、もう少し、青春をすればよかったと思う。


でも高専の男子なんて冴えないやつばかりだし、いたところで私なんかじゃモテやしない。だから、色恋沙汰なんて私には向かないわけで。


終わりみたくなってしまうけれど、縁ができた私には、宇野くんの観察というとても楽しい任務ができた。五味さんや大毛さんのことも気が向いたら観察してやろう。


私には友達もできたし、私は百合に生きればいい。宇野くんから五味さんを寝取って、ドロドロの三角チョコパイになればいい。


私はそんなことを考えながら、難しい四字熟語の説明を淡々と話す校長の話を聞いていた。


ベルが鳴り、生徒は皆一斉に帰る。私は一人、スマホで音楽を聴きながら帰る。


安純とは家が逆方向で、私には一緒に帰る友達が他にいないので、私にとってはディスプレイの奥で歌うアーティストが一緒に帰る友達だ。


しかし、家に帰ると、五味さんが私のアパートの前で立っていた。


私を見つけると、申し訳なさそうな顔をして、挨拶をした。


「実は、私も一人暮らしした方がいいって言われて、無理矢理に家を出されたの。それで、次の家が決まるまででいいから、泊めてくれない?」


なんという親だと思うが、五味さんに五十万円という大金を渡しているあたり、とんでもない親だと思う。


本当は違う理由でもあるのだろうが、深くは聞かない。それが私の優しさだ。


いつぞやかのご飯会での電車代を、まだ五味さんに払っていないので、その借金を返すつもりでしばらく五味さんを泊めることにする。


彼女との縁は、まだまだ続きそうである。

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