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ホントノ私ハ、此処ニイル

第3章 第3話


「ただいま」

 時計は午前零時を少し回っていた。


 リビングには明かりがついていたが、そこは無音。
 
 ローテーブルに書類を広げたまま、そのすぐ隣で妻はソファに突っ伏していた。

「お疲れさま」

 僕は、パジャマ姿の妻の肩から膝までを覆うように毛布をかけ、その額を撫でる。

 
 よほど疲れているのだろう。
 
 何の反応もなく、妻は深い寝息をたてている。

 書類に軽く目を通すと、どうやら今日で新人研修の指導は終わったようで、その終了レポートを書き終えたらしい。


 明日、いや、日付が変わっているから今日の土曜と明日の日曜は久々に二人揃っての休み。

 僕は妻の代わりに書類を片付けると、背広を脱いで妻の寝ている顔の近くに置いた。



 僕の嫌いな、
 妻の嫌いな、
 女物の香水の纏わりついた背広を……


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