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ホントノ私ハ、此処ニイル

第3章 第3話


 なるべく妻を見ないように、寝室へ向かおうとした僕の背中のすぐ後ろ、あの背広の嫌なにおいとともに、妻の気配があった。

「ねえ」

「ん?」

 僕は足を止めずに、そう反応するのが精一杯。

 そして、僕が寝室のドアに手をかけた時だった。


「浮気……したの?」

 妻の声とともに、僕は寝室へ足を踏み入れた。


 ふふふ……


 そして、僕の本当の顔が現れる。

 この時を待っていたんだ。


 ――臨界を。




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