ホントノ私ハ、此処ニイル
第3章 第3話
そんな毎日を過ごすうち、僕はこんなふうに思うようになっていたんだ。
これが「しあわせ」というやつなのだろうか。
世の中の人が求めるものが、自分にはこんなに物足りなく感じるものなのだろうか、と。
そして、結婚から2年半ほど経った頃、僕は気の迷いと少しの刺激を求める好奇心から、見ず知らずの女性と肌を重ねるために、ホテルへ向かった。
世にいう“浮気”というやつだろう。
だが、女性の悩ましい姿を前にしてもこれっぽっちも満たされず、それどころか、なぜか白けた気持ちになり、結局何もせずにそこを出た。
裸の女を前にして、僕の体はほんのわずかの反応すらみせなかったのだ。
僕はただ、とぼとぼと歩いた。