未成熟の誘惑
第2章 強奪
「ハイエナ、何処へ行く?」
遊園地を出ようとした時、聞き覚えのある声がした。
振り返るとそこには上司の津田さん(女)が立っている。
津田さんは真っ白なコートに身を包み、長い金髪を風に流していた。
「どうしてここが?」
「いやはや酷いじゃないか。折角GPSつきのケータイをあげたのに捨ててしまうなんて」
ああ、そう。
やけに自由なスタイルだと思ってたけど、しっかり鎖はついてた訳だ。
「依頼品に手を出したりして、駄目じゃないか。えぇ? ハイエナ、覚悟はあるんだろうな」
津田さんは笑いながらキレていた。
一切の言い訳も許さない般若が、俺の覚悟を探している。
沈黙を続けていると、次に津田さんは視線を少女に移す。
「まさかあれか? この依頼品に心を移したとか言わないよな。言うのか。へー、嫉妬しちゃうね。仕事一筋のお前が靡くなんて、明日は雪でも降るんじゃないかな」
津田さんは右手をゆっくりと振る。
これはスナイパーへの合図で、標的をロックオンしろという意味だ。
多分恐らく、標的は俺だ。
「さぁハイエナ。時間もかける気はないし、最後にひとつだけ質問をしよう。お前は私たちを裏切るのか。それとも単なる悪ふざけか」