未成熟の誘惑
第2章 強奪
まさかとは思うけど、本気で裏切る気なんかないよな。俺。
ただ休みが欲しかっただけなんだよな。
今まで世話になった津田さんに背いてまで、この少女を守ろうなんて考えていないよな。
………どうなんだよ。
「もういいよ」
消えそうでも、頭の中にすっと響いたその一言。
少女が発したのと同時に、俺も喋ったのかもしれない。
隣の少女は自分から俺の手を離す。
「私、今日凄く楽しかったよ。ハイエナさんといて、凄く楽しかった。でも、もう行かなきゃ」
「お前が行く先は家族の元なんかじゃないぞ。お前の血液を求めてる貴族の病人のとこに連れていかれて、死ぬ寸前まで抜き取られるんだぞ?」
なんて急に説明しても、少女は首を傾げるだけだった。
津田さんは聞き分けのいい少女の頭を撫で、もう一度俺を見る。
「で、お前は?」
「ちょっと遅れたのは悪かったよ、津田さん。でも俺はハイエナ、人の獲物を奪うのが仕事だろうが」
津田さんは笑う。
俺はつられて笑ったりなんかしないけど、もう照準は外れていると知っていた。