未成熟の誘惑
第3章 従属
X月4日
旦那様は物好きである。
今日は会議もなく一日時間があるということで、子供と散歩に行くと言うのだ。
旦那様の子供ではない。
拉致した子供の事をさも当然のようにそう呼ぶのだ。
彼女らだって人間だ。
人目の触れる場所で歩けば、警察なり警備員なりに助けを求めるだろう。
その危険性をきっと予測していながら、旦那様は出かける。
私は微かな少女らの勇気を願い、家事をしつつ帰りを待った。
しかしその期待も儚く消え去ることになる。
喜びの笑い声と共に、旦那様は夕方過ぎにお戻りになられた。
少女は服やお菓子を手に、皆狂ったように笑っていた。
私はその時確信した。
……壊れることを選んだのだ、と。
現実に絶望し、監禁と調教に敗北し、理性は跡形もなく消え去る。
少女の純粋さは、汚れた旦那様に一滴残らず吸いとられてしまった。
誰かこの吸血鬼の暴走を、止める者は現れるのだろうか。
老人の愚痴は尽きない。
三日坊主にならなかったこの日記は、皮肉にも私にとってストレスの結晶でしかなかった。