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天気師の少年

第3章 気象系アイドルユニット誕生

ランチェキの正解はランダムチェキといって、予め撮っておいたチェキをランダムに袋に入れて販売するものである。だから、どんな写真が出るかはお楽しみというワケで、レインのようにひとりでやっているアイドルならいいとして、グループ系のアイドルだと推しメンが出るとは限らないので、主に箱推しをしているファンに喜ばれる傾向にある。

「ラ、ランダムね・・」

目をパチパチさせる風海を見てレインは愉快そうに笑った。

「決心はついたか?」

レインが風海をからかって戯れていると、黒いスーツの男がやってきた。人相は悪く、赤いシャツを着こなして、いかにもといったカンジの男である。

「オレについて来ればうんと稼げるぜ」と男は無理矢理にレインの手を取って連れていこうとする。

「フフっ、ランジェリーチェキとは良かったな。もっとスゲぇもんを見たいよなぁ」と男はいやらしい笑いを浮かべる。

この様子からもこの男がろくなヤツでないことは良く分かる。男はレインのようにセルフプロデュースでひとりでやっているアイドルやアーティストをセクシーアイドルに仕立てあげて時にはアダルトビデオにも出演させるタチの悪いヤツだ。

女のコを食い物にするようなこの男に風海は怒りを覚えた。それに、レインもスゴく嫌がっているように見えた。

許せないと風海が憤った瞬間、突然ピンポイントに突風が吹いて男を吹き飛ばす。大の男を吹き飛ばす程の凄まじい風に吹かれて側にいたレインのスカートもめくれてしまったが、男のことで霧中だった風海は気づかなかった。

吹き飛ばされた男はどこかの店の看板に引っ掛かって黒いスーツの上着がビリッと破けた。

「うおお~っ、買ったばかりのスーツなのにぃ」

吹き飛ばされたはずみで相当強く全身を打ち付けているのに男はタフにも立ち上がった。

「この野郎」

男は頭に血が登って逆上して風海とレインに襲い掛かってくる。まさか人が天気を操るなんて非常識なことは思いもしないが、急に突風が吹いたのはレインや風海のせいだと八つ当り的に思っている。まあ、本当に風海が突風を起こしたのだが・・。しかも、買ったばかりのスーツが破けたものだから相当な逆上っぷりである。

「逃げるよ」

風海はまた突風を呼んだ。

「おわぁっ」

突風は走ってくる男を押し返して後ろ方向に吹き飛ばす。

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