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天気師の少年

第4章 天気師の宿命

一躍天下人に踊り出て、国主では飽きたらず神にもなろうとした信長も家臣明智光秀の謀反により非業の死を遂げることになる。
世に言う本能寺の変で、我が国最大のクーデターと言われている。

信長を滅ぼした明智光秀も豊臣秀吉と名を改めた藤吉郎に討たれることとなる。

秀吉は天気を自在に操り水攻め、一夜城と世に語り継がれる勝ち戦を作り上げた。

本能寺の変も実は秀吉が仕組んだ可能性が高い。光秀に謀反を起こすようにけしかけ、はるか遠く備中高松から一夜で戻ってきて逆賊光秀を滅ぼしてまんまと天下を手に入れた。

備中高松の毛利攻め、難攻不落と言われる毛利も秀吉の天気を自在に操る力に状況不利となりまんまと降伏した。

そして嵐の中の大返し。嵐を起こしたのは光秀の逃亡を阻む目的もあったが、後に中国大返しという伝説として語り継がれる時のための演出効果を狙ったものでもあった。

天気を操り大それたことをした秀吉の滅びの末路は悲惨で、気が狂って朝鮮出兵などの数々の奇行を繰り返した後に病死をする。

秀吉のした悪行は本人の破滅だけでは許されず、彼が溺愛した跡継ぎ秀頼も大阪の戦いで悲惨な最期を遂げて豊臣は完璧に滅亡した。

「天気を操るって自らの命や運気と引き換え・・」

天気を自在に操り地位も名声も欲しいままにした人たちの憐れな末路を知って風海は顔が真っ青になってガタガタと震え出した。

「どうしたの?どうしたのよ?」

雨藍は風海のその様子にただならぬものを感じた。

「い、いや、何でもないよ。そんなに恐ろしいことになるのなら、もう天気を操るのはやめた方がいいかなってちょっと思っただけ・・」

と風海は平然を装った。
死んでしまいそうなぐらいに息苦しくなったり、消えてしまうんじゃないかというぐらいに体が軽くなったりすることは雨藍には絶対に言えないと思った。

「そうだな。命を削るような恐ろしいことはもうやめた方がいいな」

老夫婦は顔を見合わせて風海に力を使うのはもうやめるように諭した。風海が異変を抱えていることを悟っているようでもある。

「あ、あの・・ありがとうございました。これで最後にします。娘さんに会えるお手伝いをさせてください」

この老夫婦は最初から依頼を実行してもらうつもりなんてなかったんだ。娘と同じように風海が消えてしまうことを心配して来てくれたのだ。

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