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天気師の少年

第4章 天気師の宿命

「どういうことなんですか?」

「あの娘も天気を操れる力を持っていた・・」

雨藍に訊かれて老夫婦は亡くなった娘のことを語り始めた。

娘はその力を使って雨予報のイベントやお祭りを天気に変えて人々を喜ばせていた。

「天気師といって天気を自在に操れる人は古来からいるらしい。だが、その力は自らの命や運気と引き替えに使える力なのだ」

この老夫婦が娘の力のことを知ったのはもう命が残り少なくなってからのことだった。
病床に伏した娘から天気を好きに操っていた罰が当たったのかも知れないと打ち明けられた老夫婦は天気を操る力のことを懸命に調べて天気師と言われる人がいることを知った。

古来は幻の国と言われる邪馬台国を統治した女王卑弥呼。卑弥呼は天気や自然現象をも自由にできる神秘の力を以て邪馬台国を繁栄させたが、不幸な最期を遂げて邪馬台国自体が幻の国と言われるように消滅してしまった。

牛若丸こと源義経は天気を自由に操って戦に勝利して平家を滅ぼして兄源頼朝が鎌倉幕府を開く立役者となったのだが、自分の地位をも脅かすと恐れ錯乱した兄源頼朝にあらぬ謀反の疑いをかけられて非業の最期を遂げた。

鎌倉幕府は弱体化して北条氏による執権政治へと移行したのだが、時の執権北条時宗の時に元の国がこの国を攻めてきた。後に元寇と言われる大侵略であるが、北条時宗は天気を味方につけて辛くも元の軍隊を追い払った。が、その後に不幸な最期を遂げている。

鎌倉幕府、室町幕府という武家政権も衰退の一途を辿り、時は血で血を洗う戦国の乱世へと移行した。

戦国の世を終わらせた英雄織田信長もまた天気を自由に操れる力を持っていた。信長を世に知らしめることになる桶狭間の戦いでは嵐を呼んで味方につけ、2万5千にも及ぶ今川義元の大軍をわずか5千で打ち破っている。

そして織田信長の家来にも天気を操れる者がいた。木下藤吉郎、後の豊臣秀吉である。

桶狭間を勝利に導いた大嵐は藤吉郎もまた呼んでいた。

元々農民だった藤吉郎は農民に扮して信長が今川の大軍に震え上がっていると嘘の情報を言いふらして、信長を滅ぼしたら自分たち領民をよろしくお願いしますと、風雨をしのぐ臨時の休憩施設を用意して酒や女をふるまって今川軍を手厚く接待した。

まんまと謀略にハマった今川軍は気分よく酔っぱらって、まさかの大嵐の中での奇襲に大軍も役に立たず大敗を喫した。

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