
世界で一番尊いあなた(嵐)
第2章 BAR MARIN
具体的な話は聞いてないが
マスターが経験してきた苦い思い出や
辛い記憶が俺とリンクするような気がして
俺の心は初めて初対面の人間に重い扉を開いた
和也「ぅっ…うっ…うぅ…」
マスター「同性愛って周りに理解され難いことだし貴方はアイドルだものね、苦しいわよね」
マスター「詳しくは聞かないわ、貴方が後に後悔なんてしちゃったらアタシも心苦しいもの」
和也「おっ…俺は…っ」
オレンジのカクテルを片手に持って
マスターはゆっくりと俺の背後に回った
そして俺の丸くなった背中を
優しく宥めるように撫でながらただ頷いた
和也「おれはっ…ずっと…ずっと…翔ちゃんのことが…っ好きでっ…」
マスター「うん」
和也「…なのに…っこのっ、きもちをっ…ぅっ誰にもっ…そうだんなんてっ…できなくてっ」
和也「つらぃのにっ…っどんどん…翔ちゃっに…溺れて…しまって…っ」
和也「もぅ…っ後戻り、できないっ…」
初めて口に出した言葉
言葉にするとそれは
鋭い槍になって倍になって戻ってきて
心に突き刺さるようにして俺を弱らせていった
でも
マスター「うんうん、辛かったわね、あなたはひとりじゃない。大丈夫よ。」
初めての理解者の言葉は
俺の放った槍よりはるかに大きくて立派な
力強い優しい愛を俺の胸に投げかけて
俺の放った負の槍は
どんどん朽ちていった
和也「…ふぅ…っ」
マスター「水、飲んだら落ち着いた?」
和也「はい…っなんかほんと…すみません…」
マスター「なあに!いいのよん♡こーんなにかわいいのにのちゃんがうちに来てアタシに心を開いてくれたなんて明日死んでも悔いはないわよ♪」
和也「はは…っそれは言い過ぎだって」
マスターは冗談交じりに俺を励ました。その笑顔が暖かくて俺は思わず気が緩んでしまう
マスター「もうすぐ翔ちゃんが戻ってくるはずだけど…その前に貴方にひとつだけ伝えておくわね」
和也「…?なんですか?」
マスター「実はね…翔ちゃん、この店に誰かを連れてきたこと1度もないのよ」
和也「えっ…」
ーーー意外だった。
和也「そうなんだ…じゃあいつもひとりで?」
マスター「えぇ。いつも端でしっとりと飲んでいるわ」
翔ちゃんはいつも後輩や先輩に囲まれてそれが楽しそうで
ひとりでお酒を飲むなんてことないと思ってた
