
世界で一番尊いあなた(嵐)
第2章 BAR MARIN
和也(なによりそれって…)
マスター「ふふ、あなたが初めてよ。翔ちゃんのツレとしてこの店に来たのは♪」
悪戯に彼女は笑う
和也「…それはすごく」
「嬉しい」
そう言いかけた時 あなたから俺に向けられた冷たい言葉の数々がフラッシュバックして頭をきつく縛るように痛ませた
和也(翔ちゃんにとって俺は特別でもなんでもないんだ)
今まで期待通りの答えもらった試しがない
きっと今日だってなんとなくで連れてこられただけだ
負の感情が俺の頭をグルグルと駆け巡る
和也(人に話しただけで…強くなれるわけなかった…)
このままではまた潰れてしまいそうな俺に
マスターはこう続けた
マスター「翔ちゃん、言ってたのよ。初めてここに連れてくる人はきっと俺の中で誰よりも特別なひとだ…って。 」
和也「…!う、嘘…?!」
言葉の意味を理解する前に俺は立ち上がった
マスターは少し驚いた顔をしながらもまるで俺の心がわかるように優しく微笑んだ
マスター「彼はとっても不器用なのよ。自分の思いを人に伝えることを何よりも恐れてる。その対象が貴方なのもしれないわ」
マスター「なぜ、そこまで慎重になるのか…それはアタシにもわからない。でも彼は彼なりに、一生懸命なの。そんな彼のことを貴方なら受け止められるはずよ」
マスター「何より彼は以前から此処で貴方のことを考えてカクテルを用意してたじゃない。まさかその相手がにのちゃんだとは思わなかったけど♪」
和也「…翔ちゃん…」
俺はストンと椅子に腰を下ろした
俺だって、翔ちゃんのことなにもわからない
なにもわからないから空ぶって
期待しても裏切られて
勝手に落ち込んで、自分はダメだと思い込んで
俺…最低だ
翔ちゃんのことなにも知ろうとしなかった
ほんとはもっと翔ちゃんのことを知りたい
翔ちゃんの心に触れたい
和也(翔ちゃんに…近づきたい)
その時、カランとドアチャイムの音がした
聞きなれた足音が俺たちの元へ近づいてくる
翔「ごめん、遅くなった」
外はやはり少し肌寒いのか頬をほんのり赤くして翔ちゃんは戻ってきた
マスター「あらん♡おかえり!外はちょっと寒かったわよね、ごめんなさいね♡」
翔「ああ、夜が老けるにつれてどんどん寒くなってくね」
翔ちゃんは小さく鼻を啜りながら俺の隣に座った
ほんのりと、煙草の臭いがした
