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ヌードモデル志願

第1章 ヌードの需要


今は、事務所に頼めばモデルが派遣されてくる時代だが、

そういう便利な時代になる以前は、裸になってくれる女性の確保は切実な問題だった。

素人限定で、姉妹や恋人ではなく他人が脱いだという条件なら、
苦学する画学生たちに同情して、行きつけの喫茶店のウエイトレスが脱いでやったのが戦後のヌードモデル第一号だとされる──その話の真偽はともかく、
私も喫茶店のウエイトレスのアルバイトを始めた。


そこは普通の喫茶店だが、壁に10点ほど絵が掛けてあった。

小さめの風景画や抽象画のなかに1点だけ、人物画がある。ずばり私のヌードだ。

ソファーに座っている私は眠っている。横には開いた本がある。読書の途中だったのだろう。
裸体を全てさらしているが、腰のあたりはうまく処理してあって、まあ、猥褻ではない。

複製画をモデルに贈る主義の日曜画家から提供されたものだった。

閉じた目と顔を確認しにくいアングル。
そのため、モデルが私だと断言するのはためらうだろうが、訊かれたら正直に答えた。(オーナーに質問しても同じ)
すでに2人の常連客が正解を出したので、私はセミプロのモデルであると明かした。

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