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ビタースイートに隠し味

第3章 Act.3

「私、椎名課長と無理に付き合っていたなんてことは一度もないです。ましてや、迷惑だなんてちっとも思ってませんよ? でも、今まで椎名課長に甘えていたのも事実です。だから、今日こそはっきりさせないと、ですよね……?」

 私は小さく深呼吸し、おもむろに続けた。

「――私の幸せは、椎名課長とずっと一緒にいることです」

 私にとっての一世一代の告白だった。
 口にしたとたん、全身が一気に熱を帯び始めた。

 椎名課長は相変わらず私を見つめたまま、黙っていた。
 驚き過ぎて声が出なくなっているのか。

「――冗談、ではないんだよな……?」

 恐る恐る確認してくる椎名課長に、私はゆっくりと頷いて見せた。

「俺、冗談は通じない方なんだが……」

「私だって、こんな冗談口が裂けたって言いませんよ……」

「本気、ってことでいいんだな?」

「本気です」

「本気の本気で?」

「本気の本気です」

 しつこい、とは突っ込めなかった。
 うやむやにし続けていたのは私なのだから、必死になっている椎名課長を責めることは出来ない。

「ブランデー入りのアフォガード、食べたいです」

 遠回しな言い方だったけれど、椎名課長には伝わったらしい。

「来るか?」

 椎名課長からの再びの誘いに、私はコクリと首を動かした。

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