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ビタースイートに隠し味

第1章 Act.1

 初雪が降った日にデートに誘われて以降、私は椎名課長とふたりきりで逢う機会が多くなっていた。

 初デートの時は緊張した。
 お互い、プライベートの姿を知らないから、どうやって椎名課長と会話したらいいのか、などと散々悩んだ。

 どうやら椎名課長も私と同じだったようで、とても緊張していたらしい。
 でも、緊張していたわりにはちゃんと私をリードしてくれたし、何かと気遣ってくれた。
 やはり、そこは年上の男性なのだな、と改めて感心した。

 そして、今日も椎名課長と逢う約束をしている。
 ただ、逢う時間が夜だ。

 実は夜に逢うのは初めてだった。
 一緒に酒でも飲まないか、と誘われた時は、さすがに少しばかり警戒した。

 私達はまだ、正式に付き合っているわけではない。
 初デートの約束以来、椎名課長は特に何も言ってこないし、キスはおろか、手を繋ぐことすらしてこない。

 もう、あれから半年は経っている。
 なのに、全く進展がないのは何故なのだろう。
 いや、もしかしたら、あえて夜のデートに誘ったのが進展の証拠なのか。

 何にしても、気は抜けない。
 ふたりきりで逢うとなれば気合いが入る。
 化粧もバッチリし、服も先月の給料が入った時に買った、白地に赤い花があしらわれたワンピースを着てみた。
 ただ、男性は基本的に服装に無頓着だから、どんなに私がおしゃれしても全く気付いてくれないのだけど。

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