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ビタースイートに隠し味

第1章 Act.1

 余裕を見て約束の十分前に待ち合わせ場所の駅に行ったはずなのに、椎名課長はすでに待っていた。

「すいません、お待たせしてしまって……」

 つい、謝罪が口から出る。

 案の定、と言うべきか、椎名課長はそんな私に向けて首を横に振って見せる。

「別に遅れたわけじゃないだろ? 謝る必要はない」

「でも……」

「俺が勝手に時間よりも早く来てしまったんだ。変に謝られてしまうとこっちが申しわけなくなる」

 そこまで言われると、私も返す言葉がない。
 困惑して俯いていると、頭にふわりと優しいものが触れた。

「せっかく早く逢えたんだ。その分、ゆっくり過ごそう?」

 椎名課長は私の頭を撫でる。

「――子供扱いしないで下さい……」

 そんな憎まれ口が咄嗟に出たけれど、内心、椎名課長に触れられたことが嬉しかった。

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