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ビタースイートに隠し味

第5章 Act.5☆

「悪い……。ちょっとだけ、このままで……」

 私よりの体格の良い真都さんの身体は重い。
 けれど、それ以上に私に甘えてくる真都さんが愛おしい。

 私は背中に手を回し、真都さんを抱き締めた。
 噴き出した汗で全身が濡れている。

「――奈波、笑わないで聴いてくれるか?」

 まだ繋がったままの状態で、真都さんがおもむろに訊ねてくる。

「俺と奈波、一緒に溶け合ったらどうなると思う?」

 何が言いたいのか、と少し怪訝に思う。
 笑う以前の話だ。

 でも、訊いている真都さんは至って真面目なのだろう。
 だから、こっちも真剣に考えて答えた方が良い気がする。

「甘さと苦みがほど良く混ざり合う感じ、とか?」

 自分でも何を言っているのか分からないと思いつつ答えたけれど、真都さんにはそれが満足のいく返しだったらしい。

「じゃあ、俺が甘いアイスで奈波が苦いコーヒーってトコかな?」

「――普通、逆じゃないですか?」

「奈波の方が俺より冷静だろ?」

「冷静ってわけでもないと思いますけど……」

 適当に濁しながらも、的を射ているとは思った。

 ふたりきりの時の真都さんは甘い。
 どこか幼さも垣間見せるし、現に今も十歳も年上とは思えないほどの甘えっぷりだ。

 それに対して、私はふたりきりでも甘さとは無縁な気がする。
 普段は気張っている真都さんを支えるため、私が大人になって真都さんにとっての居心地の良い場所にしようと思っているところは確かにある。
 元々、私は何故か年上年下に関わらずに甘えられる傾向にあったのだけど。

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