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ビタースイートに隠し味

第2章 Act.2

 駅を出てから歩くこと約十分。
 椎名課長に伴われながら来た所はイタリアンのお店だった。
 ずっと気になってはいた所だったけれど、何となく入りづらくていつも素通りしていた。

 入るなり、椎名課長は従業員のひとりに声をかけ、「予約していた椎名ですが」と名乗った。
 まさか、予約までしていてくれていたとは思わず、またさらに驚いてしまった。

 私達は一番奥の席まで案内される。
 そして、落ち着くなり、メニューブックを開いた状態で真ん中に置かれた。

「ただいま、お水をお持ちしますので」

 そう言って、従業員は一度離れた。

「苦手なものは特になかったよな?」

 椎名課長に訊ねられ、私は、「ないです」と首を振る。

「好き嫌いは特に。あ、でも、極端に辛いものは苦手かも」

「そうか。じゃあ、酒は?」

「まあ、嗜む程度には」

「了解」

 椎名課長はニコリと頷き、タイミング良く水を持ってきた従業員に注文した。

「アマトリチャーナと茄子のボロネーゼ、マルゲリータと鯛のカルパッチョ、生ハムのサラダ。それと白ワイン。あと、食後にアフォガードをふたつ」

 そこまで言ってから、私に向き直り、「他に食べたいものとかある?」と訊ねてきた。

 こっちの了承を得る前に、さっさと注文されてしまっている。
 でも、どれも私の大好物ばかりだったから、「特には」と答えた。

「お待ち下さいませ」

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