ビタースイートに隠し味
第2章 Act.2
従業員が去ってから、椎名課長は、「すまん」と頭を下げてきた。
「つい、こっちの都合で頼んでしまった……。ほんとに良かったのか……?」
「別に構いませんよ。むしろ決めてくれて助かりました」
「ならいいんだが……」
椎名課長はおもむろに、チノパンのポケットを弄る。
そして、潰れかけたボックスの煙草を取り出し、すぐにハッと我に返った。
「すまん。メシ前に吸うのはダメだったな……」
「いや、それ以前にここ、全席禁煙ですよ?」
私の突っ込みに、椎名課長はさらに肩を竦める。
椎名課長と――仮ではあっても――付き合うようになって分かってきたのだけど、どうやら彼は、場の空気が気まずくなると煙草に手を付ける癖があるようだ。
職場ではあまり吸っている姿を見たことがないから、吸う量はそんなに多い方ではないと思う。
何にしても、椎名課長は取り出してしまった煙草を再びしまい直した。
そして、今度は代わりに水をがぶがぶと勢い良く飲む。
仕事では堂々としていて、むしろ鬼のような人なのに、仕事を離れてしまうと全く様変わりしてしまう。
ただ、こんな椎名課長の一面を知っているのは、恐らく私だけかもしれない。
そう思うと、ちょっと得したような優越感に浸れる。
「つい、こっちの都合で頼んでしまった……。ほんとに良かったのか……?」
「別に構いませんよ。むしろ決めてくれて助かりました」
「ならいいんだが……」
椎名課長はおもむろに、チノパンのポケットを弄る。
そして、潰れかけたボックスの煙草を取り出し、すぐにハッと我に返った。
「すまん。メシ前に吸うのはダメだったな……」
「いや、それ以前にここ、全席禁煙ですよ?」
私の突っ込みに、椎名課長はさらに肩を竦める。
椎名課長と――仮ではあっても――付き合うようになって分かってきたのだけど、どうやら彼は、場の空気が気まずくなると煙草に手を付ける癖があるようだ。
職場ではあまり吸っている姿を見たことがないから、吸う量はそんなに多い方ではないと思う。
何にしても、椎名課長は取り出してしまった煙草を再びしまい直した。
そして、今度は代わりに水をがぶがぶと勢い良く飲む。
仕事では堂々としていて、むしろ鬼のような人なのに、仕事を離れてしまうと全く様変わりしてしまう。
ただ、こんな椎名課長の一面を知っているのは、恐らく私だけかもしれない。
そう思うと、ちょっと得したような優越感に浸れる。