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Melting Sweet

第6章 Act.6☆

 さすがに注文したものを残すのは失礼な気がして、全て綺麗に平らげてから店を後にした。
 もちろん、料理もお酒も美味しくいただいた。
 でも、杉本君を急に意識してしまったせいで、酔いが一気に回ったように思えた。
 熱帯夜のじっとりとした空気もまた、私を朦朧とさせる。

 と、急に足元がふらついた。
 前につんのめり、危うく転びそうになったところで、杉本君が咄嗟に私の身体を支えた。

「大丈夫ですか?」

 心配そうに顔を覗き込んできた杉本君に、私は「平気」と笑いかける。

「今日はいつもよりも酔っ払ったみたい。いつもと比べたらそんなに飲んでないのにね」

「――やっぱ、身体が本調子じゃなかったんじゃ……」

「違うってば」

 私はこれ以上、杉本君の心配を煽ってはいけないと思い、さらに笑顔を取り繕った。

「ほんとに身体自体は何ともないのよ。だから心配しないで、ね?」

「そう、ですか……」

 杉本君は眉間に皺を刻みながら私を見つめていたけど、やがて、「分かりました」と口元に笑みを浮かべた。

「でも、ほんとに無理しないで下さいよ? 女性は男と違ってデリケートなんですから」

「それ、私の台詞じゃない?」

「あなたはそんなこと自分で言わないでしょ?」

「まあね」

 本当に杉本君は私をよく見ている。
 感心するやら、呆れるやらだ。

「とにかく、唐沢さんはこのまま俺に寄りかかってて下さい。ひとりで歩かせたら危なっかしくて仕方ありません」

 偉そうに、とは返せなかった。
 実際、杉本君の指摘通り、支えがなければとてもまともに歩けそうにない状態だった。

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