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Melting Sweet

第6章 Act.6☆

 ◆◇◆◇

 杉本君に支えられながら着いた場所は、居酒屋の途中で目にしたラブホテルだった。
 この辺に来た時は杉本君に対して警戒心を抱いたのに、居酒屋で告白され、キスをしたとたん、気持ちもコロッと変わってしまった。
 我ながら呆れてしまう。

「まさか、こんな展開になるなんて」

 ラブホに足を踏み入れながら、杉本君がボソリと呟く。
 はっきり聴こえてしまったけど、独り言のようだったから、私はあえて何も反応しなかった。

 フロントで受け付けをしてから、私達はエレベーターに乗って部屋へと向かう。
 私は経験がないけど、こういう場で人とすれ違うのは非常に気まずいと思う。
 たとえ、全くの初対面の他人だったとしても。

 幸い、私達は誰とも逢わずに無事に部屋に辿り着いた。
 自分からけしかけたようなものとはいえ、緊張と不安がないわけじゃなかったから、入ったとたん、疲れがどっと押し寄せ、私を支え続けてくれた杉本君を巻き添えにしてベッドにどっさりと腰を下ろしてしまった。
 色気も何もあったものじゃない。

「何か飲みましょうか?」

 気を遣ってくれているのだろう。
 私を解放した杉本君は立ち上がり、冷蔵庫へと向かった。
 こういう所の飲み物は高い。
 それはよく分かっていても、今の私は喉がカラカラに渇いていて、水分を異常に欲していた。

「お水、ある?」

 杉本君が冷蔵庫を開けたタイミングで訊ねる。

 杉本君は背を向けたまま、「ありますよ」と答えた。
 そして、そこからペットボトルを二本取り出すと、再びベッドへと戻って来た。

「どうぞ」

 渡されたミネラルウォーターを、「ありがとう」とお礼を言いながら受け取る。

 杉本君は私の隣に座り、自分用に取ってきたスポーツドリンクの蓋を回す。

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