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Melting Sweet

第6章 Act.6☆

「疲れた?」

 衛也君に腕枕をしてもらいながら、私は訊ねる。

 衛也君は口元に笑みを湛え、「ちょっと」と答えた。

「でも、夕純さんと繋がることが出来たのはほんとに嬉しいですよ。俺にとっては雲の上の人だったから」

「大袈裟ね。ただの嫌味なオバサンなのに」

「オバサンじゃないですって」

 私の言葉に、衛也君はあからさまに顔をしかめた。

「夕純さんの悪い癖です。そうやって自分をわざと貶めようとするトコ。
 夕純さんは充分過ぎるほど魅力的な女性ですよ。仕事は出来るし、しっかりしてるし。それなのに、見た目年齢は俺と同世代の女子社員とあんまり変わらない。職場を出れば、小柄で可愛い女性以上に女性らしい人です」

「――本気で言ってる……?」

「本気に決まってます」

 衛也君は私を引き寄せ、そのまま胸に埋めさせた。

「今まで夕純さんを利用して傷付けてきた男達は全く見る目がないです。でも、見る目がなかったからこそ、俺にチャンスが回ってきたんですよね」

「――衛也君は……」

 私は衛也君に擦り寄りながら続ける。

「もしかして、今まで恋をしたことがないの?」

「恋、ですか……」

 衛也君は少し言い淀んでから、「ないかもしれません」と答える。

「本気で、この人いいな、って思えたのは夕純さんが初めてでしたから。考えてみると、ずっと恋らしい恋なんてしたことがなかった。だから最初の頃は、夕純さんへ対する感情に戸惑ったんです、本音言うとね。でも、時間をかけて、人を好きになることがよく分かって、それからは、夕純さんに俺の存在を強く植え付けてやろう、って必死でした」

「――その目論見は、見事成功した、ってわけね?」

「そうなりますね」

 衛也君は腕の力を緩め、私を真っ直ぐに見つめる。

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