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お稲荷こんこん

第5章 新たなこと

一晩経ったお揚げは、味が染みて艶やかな姿に。
酢飯を丸めて、せっせと詰めていく。

朝イチで諭吉から電話。
あの間延びした声が、何だか懐かしいような気分になった。
業務連絡は三分で、その他はいつものボヤキだ。
なので…そこは容赦無く。
私はこれからお稲荷を詰めなきゃならんのだ…切るぞ。

出来上がったのを並べた容器を、よっ…と持ち上げて家を出る。
そのまま隣の休憩所の定位置に置くと、ばあちゃんが座ってた椅子に座った。

空とお堂が見渡せて、暖かい日差しと風が通る場所。
前の道を通る通学途中の子供達が、普通に手を振ってくれる。
お堂にお参りにくる村の人と、一緒にお茶を飲んで笑って。
そんな生活が始まるんだ。

ばあちゃんと違うところは、長閑な休憩所でノートパソコンを開いてること。

気持ちの良い場所で筆も…いや、指が走る。

お稲荷こんこん すっこんこん
お揚げ炊けたか 味見しよ…

無意識の鼻歌は、ノッてる証拠。
お狐様も、どうぞ一緒に…。



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