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若葉

第2章 嫉妬

『そうだよ』
疑う目は続くが、怯まず前を向く。

『へ〜…?…智、授業さぼれよ。俺と遊ぼ』
『ダメだよ。次は堂本先生の美術と音楽で、2時間続けての授業だから。穴開けたらデカイよ』
『つれね〜なぁ〜』
『サボってても、成績がいい潤君と違って、こっちは授業出てたって、そこそこの成績なんだから…』
『俺が勉強教えてやるよ』
笑いながら言われても…

『下の学年に教えてもらうってのは…高校3年生のプライドが…』
『そんなプライドなんて、あったんだ?なぁ〜いつなら遊んでくれんだよ。放課後は?』
『放課後は…生徒会の仕事あるから…』
『生徒会…?』
『…授業行くよ。またね』
『あぁ、またな』

松本は和也が好きだった。
俺は…彼を好きになった事はない…

だから、自分から松本に言った。
付き合ってほしいと。

カズを好きな事を知っていたから…
近づけたくなかった。
憎まれ口をよく言われるが、それでも大事な弟。
自分みたいな、情けない道は歩ませたくない。

小さい頃から、何故か男性に好かれる性質なんだと感じていた。
そんな自分も女性に興味が持てなかった。
後ろめたい片想いばかりした。
人には言えず、苦しさだけが残った。

そんな葛藤から逃げるのも面倒になり、キレイだった自分も、抵抗する自分もさっさと捨てた。
今更、好きでもない相手と体を重ねる事が増えようと、どうでもいい。

カズが知ったら…怒るだろうな…

自分が松本と付き合い始めて、カズも翔君もまわりの生徒たちも騒ついた。
何故だと、何度も質問された。
その度に嘘を重ねた。
『好きだからだよ…』

松本もバカじゃない。
だから、自分が付き合ってほしいと言った時、すんなりと受け入れられた時は逆に驚いた。
『好きだから』なんて嘘、見抜かれているんじゃないかとヒヤヒヤした。

だけど…噂とは違って、自分に紳士的な態度の松本に驚いた。
乱暴な事は何もされなかった。
彼に抱かれている時は、まるで自分が愛されているかのような錯覚すらしてしまいそうになる。
自分を大事に扱う彼を、不思議に感じていた。

大事にする価値なんかない人間なのに…

松本にすら罪悪感を覚えた。






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