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若葉

第2章 嫉妬

『授業長かったなぁ。今日はこれで終わりや』
『先生、それ自分で言っちゃダメでしょ』
『だよな』
教室に笑いがおこる。

午前の授業を終え、売店へ向かう。

『あっ、智!昼飯、これから?』
カズに会った。
隣に並んで、すらっと背の高い相葉が、軽く頭を下げた。
いつ見ても爽やかを絵に書いたような男だ。

『これからなら、一緒に食べようよ』
カズの申し出に、相葉も笑顔でうなずいた。
『俺はいいよ。2人で食ってこいよ』
『なんだよ〜たまにはいいじゃん』
『学年も部活も違うのに、仲良いな。お前ら』

カズは松本と同じ1年、相葉は2年。
インドアのカズと違い、相葉はバスケ部のエースで、この爽やかな笑顔。女子からもキャーキャー言われていたのを、学校の帰り際に見かけた事があった。
『だって、バカなんだもん。こいつ』
『こいつって言うな!』
『えっ、そこ?バカの方じゃなくて…』
漫才みたいな会話を聞きながら、静かに去る。
『智!一緒に食おうって!』
『また、今度な〜』
背中にいる2人に手を振る。
『いつも、今度じゃん!』
『カズ君、俺っちと2人じゃ不満?』
『そうじゃないけどさ〜』
カズには相葉が側にいる。
2人の会話に、勝手に安心感を抱いた。

売店のメロンパンとコロッケパンが定番の昼飯。
場所は中庭だったり、教室だったり、生徒会室だったりと、人がいなくて静かな所だったらどこでもよかった。
今日は…中庭かな。
廊下の窓から、人のいない中庭を眺める。
ゆっくり昼飯を食べたら、昼寝でもしようかな。

『いただきます』

やっぱり…売店のメロンパンは美味いな…

そんな事を考えながら、風にゆれるマンジュシャカの艶やかな赤色をぼんやり見ていた。

キレイだな…

天国には、こんなキレイな花がたくさんあるんだろうな…

『好きだな…メロンパン』

『⁈』

静寂な世界を壊す声。

頭上からする声に、顔を向ける。
『潤君…』
『毎日、食ってないか?メロンパン』
男前な顔に笑顔を浮かべていた。
こうして笑っていると、普通の高校生に見えなくもない。
悪い噂ばかりが、彼のイメージを作り上げていた。

『ここのメロンパンが好きなんだよ』
『俺はあんまり、甘いの食わねーな』
『でも嫌いじゃないんでしょ?』
『まぁな。メロンパンよりは、ココアの揚げパンのが好きだな』





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