
若葉
第2章 嫉妬
『何、それ。すっげー甘そう』
笑いながら言うと、少しむきになって松本がいう。
『一回、食ってみろよ。美味いから』
『わかったよ。そんなむきにならなくても…ふふふ…』
『むきになってねーしっ!』
『ふふふ…』
時折、今みたいに年下らしい表情が出ると、可愛らしいとすら感じる。
ベンチに2人で座る。
柔らかい空気が流れていた。
雑談してるだけなんて、今まであまりなかったな。
『なぁ…智』
『なに?』
振り向いて、松本の目を見た途端体が固まった。
『その首の痣、誰だ?』
睨み付けるように目を細め、自分の首筋に視線のナイフを突きつけられる。
気づかれていた…
隠していたつもりだったのに。
いつから…
『だっ…誰でもないよ!自分で引っ掻いたんだ』
勢いよくベンチから立ち上がる。
危険信号が鳴り響く。
まずい…
ヤバイ…
逃げろ…
『智…逃すわけねぇだろ…』
腕を掴まれ、引きずらるように歩く。
『潤!やめろ!』
『首だけ…なんてこと、ねーよなぁ。見せろよ、全部』
言い訳なんて、初めから松本の耳には入っていなかった。
中庭を抜け、校門をくぐる。
掴まれた腕は振り解く事ができず、情けないくらい力じゃ敵わない事を実感させた。
この道は知っている。
いつも決まって同じ部屋。
次は来ないようにと、その部屋を出るたび願っていた。
ビルの35階。
エレベーターから見えるシャンデリアのライトを静かに見ていた。
抵抗するのは無駄だと感じた。
静かにしても掴まれた腕は解かれず、松本は一言も話さない。
通りすがる人間も、声をかける者はいなかっ。
このビル自体が松本の父親の所有物らしく、自由に使っていいのだと聞いた事があった。
『入れよ』
入口に立ち尽くす自分に、松本の冷たい声が掛る。
腕を引かれ、見覚えのある部屋の中央まで歩く。
『潤君…今日は帰るよ…』
今更、聞いてなど貰えない申し出をする。
『帰すわけねーだろ。全部脱げよ』
『潤…俺…』
『言い訳なら必要ない。それとも、俺に脱がしてほしいのか?』
『…』
松本に乱暴な事をされたことはなかった。
今までは。
ただ、今の松本の確信的な態度は、明らかにこの後にくる痛みや恐怖を考えさせた。
勝手に震える指先が、シャツのボタンを取るのに時間をかからせる。
ゆっくり露わになる上半身に、松本の視線が突き刺さる。
笑いながら言うと、少しむきになって松本がいう。
『一回、食ってみろよ。美味いから』
『わかったよ。そんなむきにならなくても…ふふふ…』
『むきになってねーしっ!』
『ふふふ…』
時折、今みたいに年下らしい表情が出ると、可愛らしいとすら感じる。
ベンチに2人で座る。
柔らかい空気が流れていた。
雑談してるだけなんて、今まであまりなかったな。
『なぁ…智』
『なに?』
振り向いて、松本の目を見た途端体が固まった。
『その首の痣、誰だ?』
睨み付けるように目を細め、自分の首筋に視線のナイフを突きつけられる。
気づかれていた…
隠していたつもりだったのに。
いつから…
『だっ…誰でもないよ!自分で引っ掻いたんだ』
勢いよくベンチから立ち上がる。
危険信号が鳴り響く。
まずい…
ヤバイ…
逃げろ…
『智…逃すわけねぇだろ…』
腕を掴まれ、引きずらるように歩く。
『潤!やめろ!』
『首だけ…なんてこと、ねーよなぁ。見せろよ、全部』
言い訳なんて、初めから松本の耳には入っていなかった。
中庭を抜け、校門をくぐる。
掴まれた腕は振り解く事ができず、情けないくらい力じゃ敵わない事を実感させた。
この道は知っている。
いつも決まって同じ部屋。
次は来ないようにと、その部屋を出るたび願っていた。
ビルの35階。
エレベーターから見えるシャンデリアのライトを静かに見ていた。
抵抗するのは無駄だと感じた。
静かにしても掴まれた腕は解かれず、松本は一言も話さない。
通りすがる人間も、声をかける者はいなかっ。
このビル自体が松本の父親の所有物らしく、自由に使っていいのだと聞いた事があった。
『入れよ』
入口に立ち尽くす自分に、松本の冷たい声が掛る。
腕を引かれ、見覚えのある部屋の中央まで歩く。
『潤君…今日は帰るよ…』
今更、聞いてなど貰えない申し出をする。
『帰すわけねーだろ。全部脱げよ』
『潤…俺…』
『言い訳なら必要ない。それとも、俺に脱がしてほしいのか?』
『…』
松本に乱暴な事をされたことはなかった。
今までは。
ただ、今の松本の確信的な態度は、明らかにこの後にくる痛みや恐怖を考えさせた。
勝手に震える指先が、シャツのボタンを取るのに時間をかからせる。
ゆっくり露わになる上半身に、松本の視線が突き刺さる。
