テキストサイズ

その瞳にうつりたくて…

第5章 思い出

こんなに大胆に喋れるのは彼女が目が悪いからだ。
他の人間と違って俺の事を色眼鏡で見たりしないからだ。
もし、俺が憧れのレッドだとわかれば彼女はもう俺にこんな笑顔を向けてくれなくなる。
淡い初恋の思い出が台無しになってしまう。

それをわかって彼女と友達になり、こんな大胆に話せるなんて
我ながら危ない事をしてるなと思ってる。

「でも、ハルさんが私のピアノを聞いたのってこの間の戦隊物の」
「え?あぁ、うん。まぁ…」

やべ…、自分から戦隊物の話題を振ってしまった。
とりあえず、ここは誤魔化しとこうか。

「お、俺も昔、ちょっとだけ見てたから」
「なぁんだ。やっぱり」

見てたどころか主役として出演してましたけどね。
何て、この子の前では口が裂けても言えない状況になってしまっている。

「ハルさんはどう思いました?主役のレッド!」
「あ、あぁ、そ、そうだなぁ~…」

わざとらしく考えるふりをしたが、本人にそれを聞いてもなぁ。
まぁ、彼女は見えてないから仕方ない事だけど。
つーか、俺にそんな事聞かれても…。
彼女もまさかレッド本人に聞いてるなんて思ってないだろう。

「あ~、お、覚えてないな~…」
「え~、何それ~」

とりあえず、当たり障りのない回答をした。
仮に見ていたとしても20年も前の戦隊物の事なんて覚えてなくても変じゃないだろうし。
つーか、自分で自分の感想を言うのもなかなか恥ずかしい…。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ