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男の友情・女の立場

第8章 後悔

何度か煙を肺に送った美羽の頭の中には卓也の顔が蘇り、そこから《後悔》の時間が始まる。

そして、ついさっきまで自分がしていた醜態がプレイバックし、何度も再生された。

美羽は今日までに何度も何度も考えをめぐらし、自分を失わないためにいくつもの戒律をつくりそれに託そうとしたが、全て成し遂げることができなかった。


それどころかオーガズムの虜になり、卓也とのセックス以上に燃え上がり、自分から積極的に健太を求めて見るも無残な結果を残してしまった。

「なにやってんだろ…私…」

ふと口をついて出た言葉が自分の耳に入ると、まるで他人が喋った声のように聞こえ、現実感がなかった。

美羽は、中国の奥地にいるという「一妻多夫」の村のことや、エスキモーが客人に妻を差し出す慣習が過去にあったこと、昔見た古い映画「明日に向かって撃て」で主演のロバート・レッドフォードが自分の恋人とイチャつくポール・ニューマンを見つけたときに「TAKE IT(持ってけよ)」と軽く言い放ったことなどを一気に思い出したが、そこから自分のアイデンティティを復活させられるヒントを見つけることはできなかった。


ただ、健太と寝るまで自分は《被害者》だと思っていたが、今は少し違った。

そして自分さえ被害者にならなければ、WIN・WIN……いや、WIN・WIN・WINで追われるんじゃないかと思えるようになった。


ただ、これで全て失うものなく、今日以前の生活が守られるのかどうかが心配だった。

このあと家に帰って卓也と顔を合わすことを想像し、すぐに首を振ってかき消した。

(卓也はどんな態度で私に接してくるんだろう…)

そう考えた美羽は身震いする。

(友情と責任感と正義感と勢いで自分の女を親友に提供したものの、今、家では2人のセックスを想像して後悔しているのではないか?家に帰ってなんとも言えない空気が張り詰めて、その修復ができずに別れることになるんじゃないだろうか?)

とも考えた。


自分の罪悪感を克服できても、言い出しっぺの卓也と健太が自分たちの精神をコントロールできるとも限らないのだ。


憂鬱になりどんよりしていた美羽に、いつのまにか目覚めた健太が声をかけた。

「あ、あの、美羽ちゃん?今日はありがとう」

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