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堅実メイドの献身

第4章 辞退

そう言って、厨房に入る。

この屋敷の料理は柴田と見習い料理人1人、あと、何人かのメイドが入れ替わりで担当している。

この屋敷は広いが、旦那様、奥様、暎人様、その他使用人15名ほどである。
また、使用人の内、住み込みではなく通いの者もいるので、皆が皆こちらで食事するわけでもない。というわけで料理人は柴田一人と見習い一人でこと足りる。

「木野さんはどちらに?」

「今日は休みの日だよ。」

木野とは見習い人のことだ、どうやら今日は休みらしい。

盛り付けを淡々とこなす。
今日の朝食は白米、味噌汁、焼き魚、漬物、サラダだ。
使用人の食事は一般的な家庭料理だ。
朝食はそこまで、凝った物を作らないことが多いため、柴田と木野の2人で担当しているが、雅が勝手に手伝っている。
料理が好きなのもあるが、雅がそういう世話焼きな面がややあるからかもしれない。

「おはようございます。」

やってきたのは藤井だ。

「おはようさん。もうできてるよ。」

柴田が朝食の膳を渡す。

「ありがとうございます。」

膳を受けとると黙々と食ベ始めた。

「雅ちゃんももう大丈夫だから食べな。」

「はい。」

雅も席について食べ始める。

ー なんか、食欲ないな。

間違いなく昨日の事の所為なのだが、それでも食べなければ、途中でお腹が空くかもしれない。
のろのろと箸を運ぶ。

「大丈夫ですか?」

いつの間にが食べ終わった藤井が近寄ってきた。向かいの席にすっと掛ける。

「顔色があまり良くありませんね。」

「実は昨夜はよく眠れなくて。」

暎人様に無理やりセックスされて寝不足です。とは、言える訳がない。もし、藤井に伝えたらどうなるだろう。
相談に乗ってくれるだろうか。いや、間違いなく解雇だろうな。
例え暎人から迫ってきたといえ、使用人の立場は弱い。こちらが罰を受けるのは間違いない。とにかく昨日の事は黙っておくしかない。

「あまり気負わない事です。誰でも初めてのことは戸惑いますから。」

どうやら、暎人のお付きメイドになった事で寝不足だと受け取ってくれたらしい。
あながち間違いではない。というか、そう受け取ってもらえた方が有難い。

「お気遣いありがとうございます。」


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