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堅実メイドの献身

第6章 そもそもメイドなるものは

暎人の手を引き剥がそうと掴んで身をよじる。
が、ビクともしない。

「駄目だよ。僕から逃げようなんて。」

そっと抱き締めらる。
耳元で話す暎人の声が鼓膜を震わせた。

「雅は、もう僕のものなんだからね。」

ー どうしよう。

「暎人様、怒っておられる、、のですか?」

恐る恐る尋ねる。
抱き締められているので、暎人の表情は見えない。

「そうだね。雅があまりに反抗的だから。」

そう言って、雅の首元に顔を埋める。くすぐったい様な感触が伝わる。
暎人が抱き締めている腕の力を強めて、より自分の体を押し付けてきた。

「ぁ、」

後ろによろけそうになり、とっさにワゴンの持ち手を掴む。

「反抗しようなどとは、、ひゃっ」

首筋からザワザワとした感覚がさざ波の様に広がる。暎人の舌がメイド服からわずかに露出した首筋を舐め上げる。
思わずワゴンを持つ手に力が入る。何度も微細な感触が首筋を上下する。

 カチャリ、カチャ

弱々しく繰り返される感触に気を取られていると、金属のふれあう音がする。

ー この音、なに?

音の出どころを確かめようにも身動きが取れない。

「暎人様、お待ちください。もう少し話し合いましょう。」

「うん、、いいよ。続けて。」

そう言うものの、雅を離す様子はない。
首元に優しく口付けると、次は耳の裏に口付ける。

「んっ、これでは私がお話できません。」

たとえ些細な刺激でも、その度に意識を惑わされる。

「僕は特に困らないけどね。」

暎人は雅の首元から離れ、こちらに向き直るとキスしてきた。雅の背に回っていた手が緩み、メイド服の前たてボタンを外していく。息苦しくなり少し口を開くと、舌先がぐいぐいと雅の口内に侵入してくる。その圧に押され雅は仰け反る体制になるが、ワゴンを持つ手に力を込めて上体を支える。
ワゴンごとひっくり返してしまいそうなのを耐えながら、暎人の舌にも抗う。

「口を塞がれては、言いたいことも言えません。」

隙を突き暎人の舌から逃れると、そう言って暎人を押し返そうと、両手を前に

カチャ

「えっ、なに?」

手が前に出せない。

カチャカチャ

金属音が鳴る。首を目一杯ひねると手首に腕輪の様なものがついているが、よく見えない。

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