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堅実メイドの献身

第6章 そもそもメイドなるものは

「ははっ、すごいね。」

手にした紙切れでヒラヒラと顔を仰ぐ。

「つまり、私の業務に夜のお相手は含まれておりません。したがって、今後そう言ったことは一切できませんので、お控えくださいます様お願い致します。」

ー よしっ、きっぱり断った!偉いぞ雅。

「確かにね、仕事に入ってるかと言えばねぇ、、、」

表情を曇らせ暎人が言う。

「それに、将来ご夫人になる予定の方々がおられるではないですか。」

さらに追い討ちをかける。

「あ、もしかしてあれ見た?藤井が調べ上げた僕のお嫁さん候補。」

ー あれ、やっぱり藤井さんだったんだ。

「えぇ、一応暎人様に関わることは全て把握しておかなかればなりませんからね。」

「この家に生まれてしまったからには、意外と不便なことも多くてね。恋人も自由に決められないんだよ。」

「お気の毒様です。」

「ただ、僕も健全な男子なのでね、、、」

そう言うと雅が渡した紙を机に置いて、カップ片手に近づいてきた。

「あの、暎人様。これ以上近づかないでください。」

「会社の女の子は駄目なんだ。結婚できないのに付き合っても揉めるだけだし。」

そう言ってカップに口をつける。

「かと言って、その辺でナンパするのもね。何度も会うと結局お付き合いするのかはっきりしないといけないし、」

「あのご夫人候補の中から早く決めてしまえがよろしいのでは?」

決まってしまえば、心置きなく公に付き合える。

「僕一人では決めれないんだよ。今すぐに決めることもできない。状況をみたり、相手の出方次第でもある。」

そう言ってさらに暎人は近づいてくる。

「暎人様、それ以上近づいたら怒りますよ。」

「怒る?いつから僕にそんなこと言うようになったんだい?」

笑顔だけど、目が笑ってない。

ー 暎人様怒ってるの?雰囲気が怖いんだけど。

「それは、、」

暎人に気圧されて思わず怯んでしまった。

「これ、ご馳走様。美味しかった。」

暎人はそう言って、空のカップをワゴンに戻す。

暎人の左手が雅の頰に添えられる。ぴくりと体が反応する。

「ふっ、そんなに警戒しないで。」

「雅には僕のこと支えてほしい。」

「これは命令だよ。」

そう言ってもう片方の手も雅の頰に添える。

「命令と、、言われましても、、」

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