テキストサイズ

堅実メイドの献身

第2章 真昼間の辞令

雅が了承すると、藤井はでは、失礼しますと言ってその場から立ち去った。
入れ替わりでやってきた三崎から業務の説明がされる。

暎人様のお付きメイドとは、身の周りのお世話、スケジュール管理、仕事のアシスタントなども一部含まれるらしい。

三崎が色々と説明してくれるが、雅は半分は上の空で返事をする。

暎人はこの宮古家の跡取息子で、それはそれは大事に育てられてきた。
大事に育てられてきたからと言って、どうしようもないボンボンに育ったわけではない。礼儀正しく、使用人からの評判も悪くない。寧ろ、人となりが出来すぎていて逆に怖いくらいだ。


というのが、側から見た印象だ。
実は雅のような普通のメイドが暎人と直接会話する機会は滅多にない。
あったとしても、業務上の一言二言くらいだろう。そこから、暎人の内面まで窺い知ることはできない。
お付きメイドになれば、今までよりは関わることも増えるだろう。

「はい。説明はこんな感じかしら。後はやってみて随時分からなければ聞いてちょうだい。」

「わかりました。」

「じゃあ、暎人様とお顔合わせしましょう。」

三崎は席を立つと、雅を隣の部屋に案内する。ドアを開けて中に入るよう促される。

「失礼します。」

「やぁ、君が伊東さんか。よろしく。」

好青年という言葉に階級があるとすれば、その最上級を体現したような青年が挨拶してくる。この方が暎人様だ。紳士的な笑顔が眩しい。

「お付きメイドを任せて頂くことになりました。伊東雅と申します。よろしくお願い致します。」

そう言うと深々と一礼する。

「そんなに堅くならないで、これから色々迷惑かけると思うけど、よろしく頼むよ。」

「かしこまりました。」

「藤井からどんな人なのか聞いていたけど、中々クールな感じだね、伊東さんは。」

「すみません。愛想がないとよく言われます。」

仕事となると気を張ってるせいか、クールとか冷静だとか落ち着いているとかよく言われるので慣れている。

「いや、きちんとされている方で助かるよ。」

「伊東さん、それでは本日は挨拶のみですので、明日より正式に仕事の方はお願いします。では、暎人様。」

「あぁ。」

藤井がその場を締め、暎人が退室する。

暎人が退室するのを待って、三崎と雅も退室した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ