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ミストレス・ラブ

第2章 初めてリハ

ユキさんの言葉でハッとした。

これはユキさんの。主役のためのレッスンなんだ。

「そうね。ではもう一度はじめから。プレパレーション…」

S先生の低く冷たい声を合図に、リハーサルは再開された。

振りを覚えれば、上手く踊れるようになるわけじゃない。
頭のてっぺんからつま先まで、意識しないと美しい踊りにはならない。
わかってはいる。でも…

「もっと腕を滑らかに!胸から動かして!表情もっと伝えて!音を感じてー…」

S先生は技術的なことは一切伝えなかった。
そんなのは出来て当然で、このリハは踊りをより良いものへと昇華する段階だった。

私はといえば、散々だった。
振りは出来ても何回も通すと体力が続かない。
根本的なレッスンの量も、技術も及ばないのだ。


※プレパレーション…踊る前の準備のポーズ

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