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ミストレス・ラブ

第2章 初めてリハ

「今の時点では、の話よ。それから…」

S先生は私の手引っ張り、グルんと机のそばにある鏡に身体を向けた。

「手足の長さ、顔の小ささ、愛らしい雰囲気、悪くないわ」

背後から私の両腕を持ち上げ、アンオーの形を作ってみせた。

「舞台ではね、全てが揃っていないとダメ。主役ならなおさら。そして技術を上げるのは教師の仕事。」

先生の思わぬ行動に思わず目を丸くした。

鏡の中の私の顔は湯気が出そうなくらい紅潮していた。

「そして、あなた自身の努力。泣いてる暇なんて無いのよ。」

先生の、心まで見透かされそうな大きな瞳と目が合う。

「明日のレッスンの前、1番に私のところへ来なさい。」

耳元でささやいたあと、先生は何もなかったように席につき、事務作業を続けた。

「…はい。おねがいします」

私はわけもわからないまま、自分でもやっと聞こえるくらい小さな声で返事をした。


※アンオー…両手を上げて肘を軽く曲げたポジション

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