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ミストレス・ラブ

第1章 先生との出会い

S先生の厳しさを目の当たりにした私たち(支部生)は、その後のレッスンも緊張感から、生きた心地がしなかった。

幸いなことにS先生は支部の生徒には、特に期待していない様子で厳しく指導したりはせず

その日のリハーサルの最後でも
「周りの動きをよく見て」とか「ポーズをとる所はしっかり揃えて」とか
普段のレッスンで言われるような当たり障りのない事を言うだけだった。

「この様子なら本部とのリハも本番も大して怒られないですみそうだね」

リハを終えた私たちはみんなほっとした表情で、誰かが言っていた言葉にうんうんと頷いていた。

そう、私たち支部はもともと本気でプロを目指すような子たちじゃない。
かわいい衣装が着られて「それらしい」ステップを踏んで発表会に来る家族や友達に
「上手だったね」と褒められればそれでいいのだ。

ほかの子はどう思っているかわからないけど、私はあの時までは本気でそう思っていた。

3回目のリハの最後、S先生に呼び止められるまでは…

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