ひとつ屋根の下の愛情論
第9章 泣きたいのは俺の方
だが――――…
お前は…覚えていていなかった…
「無条件で愛してやる、家族…兄弟だろ?」
いつものように…背中を預ける秋音を抱きしめ…
俺は
自分に言い聞かせるように――――…
“家族”
“兄弟”
と、言った。
お前を変態的な目で見てしまう…ダメで気持ち悪い…人間はもういない……
俺はお前の兄として――――…芽生えた欲望を…殺すと決めた。
だから――――…この、お前の背中を抱きしめる行為も…最初で最後だ…
「――――家族…///兄弟…」
背中を抱きしめられ…動揺している秋音は…体を固くして…俺の言葉を繰り返した。
そして――――…
「――――ありがとう………兄…さん」
と、肩を震わせた。
多分…泣いているのだと思った。
家族で――――正解だと…実感した。
俺の…変態的な愛は…間違っている。
無条件の愛――――…それは家族愛だ…
良かった…俺は正解を引いた…
秋音が覚えていなくて良かった、もし覚えていていたら――――…
俺は、お前を地獄に引き座り込む…悪魔になるところだった。
“兄さん”
そう…俺は――――コイツの兄…
それ以外の何者でも…ないって――――…
分かった…
秋音が泣いている…
バカ野郎…泣きたいのは…
俺の方だ――――…