ひとつ屋根の下の愛情論
第10章 裏表の夏
「――――と、ここは…この数式を…」
夏休みに入り――――俺は、律夏の勤めている塾の夏期講習に行くことにした。
流石、人気塾講師――――…律夏の授業は席が埋まる。
その後のフリー授業も律夏は分刻みで生徒の相手をしている。
「嘘じゃなかったんだ――――…」
そして、ワイルドな律夏が的確に分かりやすく数学を教える姿は…不覚にも見とれてしまうところがあって…モヤモヤした感情が再び登ってくる感覚に戸惑う。
しかし、そのモヤモヤの答えは――――…もう分かっている…
“家族愛”
“兄弟愛”
だ――――…。
律夏が俺の背中を抱きしめ――――…確かに言った。
「無条件で愛してやる…家族…兄弟だから」
と…
何故か――――その答えに俺は泣いてしまったが…
そうか――――これが
“家族愛・兄弟愛”なんだと…飲み込んだ。