ひとつ屋根の下の愛情論
第10章 裏表の夏
そして、期末試験の後に担任と行った最終進路調査に――――…
今の自分の実力より少し上の――――…都外の大学を希望した。
その大学を選んだ理由は――――…
特に無いが…
なんか――――…ここじゃない…どこかへ…行きたかった。
だから…
頑張ったら手の届く大学ならどこでもよかった。
今は――――勉強に集中して…
頭の中を数式や公式、年号や単語、知事ネタで埋め尽くしたかった。
「福田君、頑張ってるね!」
「あ~…横沢さんも…」
講習初日の教室で彼女を見かけたときは驚いた。
そして、何度か顔を会わせるようになると、不思議と彼女の方から近づいてきた。
「大学――――都外希望なんだよね?私は迷ってた…でも、そろそろ答え出さないと…」
「まだ、時間あるよ?」
「え?そうかな?」
制服姿じゃない彼女はなんだか明るく見えた。
もっと…真面目で大人しいイメージだが…
服装一つで…こうも違って見えるとは…