ひとつ屋根の下の愛情論
第15章 炎の願い
穂希 雅(ホマレ ミヤビ)…男の名はそうだと別れ際に聞いた。
連絡先を交換して――――…冷めた心のまま…俺は雅と別れた。
ホテルを出て――――…上着のポケットからスマホを取り出し…
着信を見た。
着信が来ていたのは知っていた――――だが、俺は雅と体を重ねていて…出ることはしなかった。
雅も――――俺のスマホに着信が何度も来ていたのは知っていた…だが、何も言わなかった。
その――――着信履歴を見て…胃がギュッっと縮まるのが分かった。
“秋音――――14件”
俺はタバコの煙を見つめる…ため息をついた。
そして――――…指で嘘を奏でる。
『今日――――文化祭行けなくて悪かった。
来年度からの試験問題見直しの件で――――…忙しくてな。悪いが…とうぶん帰れないと思う。俺は自分のアパートに帰る。お前を一人にするのは心苦しいが――――そろそろ俺がいなくても大丈夫だろ?何かあったら連絡しろ。』
そう…そっけないメールをした。
俺は返事が来る前に…タバコの小さな炎を手のひらで…消した。
熱かったが――――…この地味な熱さを…忘れないようにしようと…
誓った。
俺は――――このど~しようもない、気持ちを…タバコの火と共に握りつぶした…