テキストサイズ

ひとつ屋根の下の愛情論

第4章 一押しの食パン


「だから――――…このトースターにこだわったんだ…」



すると…パンの焼けるいい香りが台所と居間を包んだ。



「一押し食パン?」


居間の扉が開き――――…律夏さんが眠たそうな顔で入ってきた。


「うん。食べるでしょ――――皿出して…」


「あ~…じゃぁ、コーヒーも…」


俺と律夏さんは二人で朝食の準備をした。



「――――いい香り…」

「だな――――…」



食卓には、焼いた食パンとコーヒーだけの質素な朝食が並べられた…


俺と律夏さんは向かい合って座り…手を合わせ

そして…「「いただきます」」と、一緒に食べ始めた。




それは――――…今まで食べた…どんな朝食よりも旨かった。



「旨い――――」


「一押しだからなぁ…」



「旨い…旨いね…律夏…」


そして、律夏さんを…“律夏”と初めて呼んだ…



そして、涙も――――…流れた。



「良かったな…泣くくらい…旨くて…」




「…うるせぇよ…」



俺は乱暴に涙を拭くとパンにかじりついた。



多分――――このパンは…吐かない。



そう、思った。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ