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歪ーいびつー

第16章 ー最終章ー




「楓まだかねー」

始業式で午前授業だった私達は、授業が終わると屋上へと来ていた。
楓くんは徒歩五分の所にあるお花屋さんで、花束を買いに行ってくれている。
三人でお供えをしようと思ってーー。

「いやぁーしかし今日の朝は気まずかったなぁ」
「……? 」
「楓と手繋いでたでしょ? 楓なんてデレデレしちゃって見てるこっちが恥ずかしかったよ」
「えっ?! ご……ごめんね、朱莉ちゃん」

朱莉ちゃんに気まずい思いをさせていたのかと、申し訳なく思う気持ちと恥ずかしさから顔を俯かせた。

「夢はさ……楓の事好き? 」
「えっ!? ど……う……だろう」

楓くんの事は勿論大好き。でも、それが恋かと言ったら……正直わからない。

「楓カッコイイし優しいし良いと思うけどなー」

ニヤニヤとして、私をからかう様に覗き込む朱莉ちゃん。

「夢……」

突然真剣な表情になった朱莉ちゃんに緊張した私は、少しばかり無意識に姿勢を正した。

「いいんだよ、涼以外の人を好きになっても」

そう言って優しく微笑む朱莉ちゃん。

「……うん」

私を好きだと言ってくれた楓くん。
その気持ちに応えられたら……きっと幸せになれるのかもしれない。
最近の出来事を思い出してみると、私の隣でずっと支えてくれていた楓くんが思い浮かぶ。
でも、やっぱり……。私は自分の左手首に付けているブレスレットにそっと触れてみた。
すると、それに気付いた朱莉ちゃんが口を開いた。

「夢そんなのしてたっけ? 」
「うん……ずっとしまってたんだけどね、久しぶりに付けてみたの」

私は笑顔でそう答えると、ブレスレットに視線を移してピンクの貝殻を見つめた。




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