歪ーいびつー
第16章 ー最終章ー
ピンクの小さな箱からブレスレットを取り出すと、私はそれを左手首へと付けた。
今までずっと付ける事のなかった涼くんとお揃いのブレスレット。
やっぱり見ると凄く辛くて……今まで付けられなかった。
でも、今日から私はこれを付けて、少しでも前に向かって頑張ろうと思う。これは、お守りみたいなもの。
貝殻にそっと触れると、私は小さく微笑んだ。
いつまでも閉じ込めていないで、受け入れて前へ向かって生きてゆく。私は昨日、そう決意した。
辛い事から逃げてばかりでは前に進めないからーー。
ーーーピンポーン
「夢ちゃーん。楓くんがお迎えに来てくれたわよー」
「はーい」
ママに返事をして一階へ降りて行くと、優しく微笑む楓くんが玄関に立っていた。
「おはよう、夢ちゃん」
「楓くん、おはよう」
私は笑顔で楓くんに挨拶をすると、「行ってきます」とママに言って楓くんと二人で玄関を出た。
「夢ちゃんが始業式に出てくれて良かった」
小首を傾げてニッコリと微笑む楓くん。
「うん……心配させちゃってごめんね」
私が申し訳なさそうに見上げて答えると、楓くんは「可愛いー」と言ってふわりと微笑む。
何が可愛いのかと疑問に思っていると、頭上から楓くんの声が聞こえてきた。
「夢ちゃん。手……繋いでもいい? 」
「えっ……!? ……う、うん」
そんな質問をされた事がなかったので、改めて言われた私は何だか妙に恥ずかしくて……ほんのりと赤く染まった顔を隠すようにして俯いた。
私の右手をそっと掴んだ楓くんは、その手にキュッと力を込めると口を開く。
「ずっと俺が側にいてあげるからね」
その言葉に視線を上げると、楓くんはとても優しい顔をして私を見つめていた。
「うん……ありがとう」
楓くんの色気のある綺麗な顔に見惚れた私は、気付いたら無意識にそう答えていた。
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